Secret Window, Secret Garden
晴れた朝は、生き物たちの楽園です。
特に、幾日も雨と風が続いた後では。
雄雉が吠え、大赤啄木鳥が苔むした太枝を太鼓叩きし、蝗が跳び、車飛蝗の後肢が鳴き、それらを蟷螂が捕食しようと、凝然と草に溶け込みます。
黒猫が緩々と、彼等に分け入り、陽を浴びて匂い立つ秋草の叢や刈り取られた雑草の山、枯れた竹幹、自動車のタイヤを、いつもの順番通りに、嗅ぎ、改め、目印付けを淡々と行います。
生き物ばかりではありません。
無生物・生物を問わず、朝は、変化を強要します。
木々の間から差し込む陽の光は、葉群が有する寿命の推移と共に、中波長光に代わって長波長光の割合が急激に多くなる、即ち、緑から黄へと、何時の間にか、その色合いを変え、はらはらと屋根に舞い降りる折れ落ちた小枝や、天寿を全うした葉が奏でる叩音は、冷え切った建物が温かみを帯びて伸びをする時に放つ、ぱきぱきという軋音と重なって、私達の準備不足な心に、微かな怯えを呼び込みます。
そうと気づけば、晩秋の朝の庭は、単なる楽園から、否応なき冥府へのとば口へと変貌し、鳥達の鳴騒も、待ちに待った暖かな陽の光が呼び覚ます歓喜ではなく、軈て来る冬を意識しての喧しい焦燥を物語っているようにも思えてきます。
ふと見上げると、峩々とした頂には、青みを帯びた灰色の装飾が。
初冠雪。
冬が来る。